時代遅れのニューヨーカー。

コラム

 

「ジョージは未来が見えるけど、目の前が見えないよね」と、22歳の冬にフラれたときの言葉。
アンビシャスで成功を掴みたいのはいいけど、目の前の自分を見てくれないと言われた。恋愛には不器用で、駆け引きが苦手で、自分の時間軸で動いていた。甘酸っぱいストロベリーショートケーキのような恋も、今では可愛い思い出だ。確かに、自分にはその傾向があることを自負している。

それがビジネスにも、デザインプロセスにも露骨に出ている。「今の時代」に合わせたデザインをするのが本当に苦手で、情熱を注げないデザインはミラモアではしたくないのです。もう少し自由で時には突拍子でファニーなことをしたいけれど、ミラモアは確固たる、そうであるべきブランドにしなければならない。本質のある芸術性とは何か?と常に自問自答しながらコンセプトも育みます。
そもそも、この考え方自体が時代遅れなのか?
自分のデザインフィロソフィーは「明日に残る作品」がデフォルト。ファインジュエリーはファッションと異なり、トレンドがあってはいけないと思っている。もちろん時には流れがあり、それが舞い戻ることもある。ファインジュエリーは、高価な「一生物」を提供するものだ。数ヶ月で「もう飽きた」とお客様に思われたら、それは許されない。


しかし、ビジネスにおいて頑固なクリエーターとしてのエゴを捨てる必要が出てくるかもしれない。もちろん、自分の中でのマイブームがあり、毎日身につけるジュエリーもあれば、ジュエリーボックスに眠っているものもある。時々ジュエリーボックスを見直してみると、やはり心がときめくのはミラモア。自画自賛もここまで来ると笑える。それがKINTSUGIであれ、デュオチェーンであれ、点字ダイヤモンドであれ、デュオハートであれ、セルフラブであれ、それぞれには個性があり、それが混ざったとしてもハーモニーを奏でるのが自分のスタイルだ。


デザインをするとき、性別は考えない。もちろん人に見つけて欲しいから形を考えるが、想像するときは真っ黒なシルエットに自分のデザインを身につけることを想像しながらデザインする。だから、「ジェンダーレス」と言われてしまえばそれまでだが、意識したことはない。むしろ自分に似合うデザインかどうかが重要だと思います(笑)。

 

自分がデザインした作品が大好きで、寝ているときも、仕事をしているときも、運動をしているときも、何もしていないときも、常にジュエリーを身につけています。ビジネスでは時代を読まなければ成り立たない部分もありますが、それが自分の最大の弱点だと自覚しています。しかし、チームは「ジョージさんは時代を読む必要はありません。自分らしく創作してください。時代は私たちが読みます」と、心強く励ましてくれます。



ミラモアで学んだことは多く、「チームワーク」がそれを教えてくれます。デザインとビジネスのバランスを取るのではなく、それが自然にフラットになることも良いのではないかと思います。22歳の時にフラれた個人プレイヤーから卒業し、チームリーダーとして成長しました。
後世に残るデザイン、後世に残るブランド、それがミラモアです。「価値観を打ち破り、新たなスタンダードを築く」。それが自分に適しているのかもしれません。



稲木ジョージ
ミラモア創設者&金継ぎ哲学者
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