花火大会が大好きで、夏休みの一番の楽しみだった。聞き慣れたアルバムCDをマックス音量にし て、鏡の前で一時間、ヘアワックスとケープを使って髪の毛をねじり、固めた。夏休みに茶髪にし た髪を、気合い入れてセットし、高揚感に包まれながら準備をするところからイベントが始まる。
友達と遠くの祭りに出かけ、同級生や学校の顔見知りと偶然会って、友達の輪を広げていった。夜空に広がる花火のように、出会いが弾け、輪が広がっていく。しかし今では、その反対で友達の輪は狭まり、ライフステージの違いで疎遠になるのは自分だけでしょうか。ご縁というのは、輪ゴムのように伸び縮みするものなのだろうか。
もちろん、当時はスマホなんてない時代で、インスタントカメラが主流。花火の写真を撮っても、インスタントカメラではその美しい模様を完全には捉えられなかった。それでも、その瞬間の感動は記憶と思い出として心に刻まれていった。
祭りのテキ屋のさまざまな食べ物や売り物を眺めるのが好きで、日本のテキ屋の独特な美学が面白く、昭和の時代を感じさせるその色合いや手書き風のフォントが特に好きだった。浴衣や甚兵衛姿の人たちが、よりムードを高めてくれる。
花火大会が始まると、夜空に響くドーン、ドーンという音とともに、火薬の匂いが漂い始める。
花火の音をBGMに、友達と他愛もない話をしながら笑い合った。それが青春だった。何を話すかよ りも、その場の空気感を共有することに意味があった。
贅沢にも花火が彩る空が楽しい雰囲気を盛り上げてくれる。
数時間に及ぶ花火大会がフィナーレを迎えると、観客たちは余韻を胸に、大量の人々が駅へと整然と列をなして歩いていく。
楽しかった時間も終わりを告げ、ちょっぴり寂しい気持ちになる。一瞬で消える美しい花火の模様は、その儚さゆえに哀愁を帯び、色鮮やかな思い出として心に残る。
その記憶を蘇らせ、18金、アコヤパール、天然ダイヤモンド、そしてカラーサファイアを使っ て、HANABIコレクションとして形に残したかった。牡丹が満開になる直前、万華鏡のような形で鼓 動が高まるクライマックスの瞬間と、柳のように散っていく姿。それが「打ち上げHANABIピアス」 とチャームたち。一つずつ離れているけれど、繋げると大きな花火大会になる。今となっては、あ の作品たちが花火の如く「幻」と化した。
線香花火の火花をイメージしたバックピアスは、火花が散る瞬間を再現。
あの思い出を身につけられると思うと、ジュエリーは面白いね。
稲木ジョージ
ミラモア創設者&金継ぎ哲学者