
金継ぎとパートナーシップ: 絆を継ぐ
壊れやすい物と同じように、恋愛や人間関係も、時間が経つにつれてひび割れや破綻に脆いものです。簡単に諦めてしまいがちですが、壊れたものを修復し、より強い絆を築くことには美しさがあります。人間関係は、自己との関係も含め、常に進行中の過程だと僕は思います。
僕たちはしばしば人間関係の美しさを、華やかな側面だけで捉えがちです。しかし、困難な時や「醜い」瞬間に直面すると、放置したり諦めてしまうことが多いです。僕の哲学では、パートナーや友人に対して「この人とならジェットコースターに一緒に乗れる!」と覚悟を持てるかどうかが大切だと思います。人生は平坦な道ではなく、常に浮き沈みがあるからです。そして、その浮き沈みを共に乗り越えるためには、忍耐が必要です。金継ぎが壊れた陶器を継ぐのに時間と労力がかかるように、人間関係もまた、時間をかけて修復し、強くすることが求められるのです。
金継ぎの哲学では、これらの不完全さは隠されず、漆と金を使って修復し、その過程の美しさを強調します。人間関係におけるひび割れは、困難や傷、誤解の瞬間を象徴しています。しかし、壊れ
たものを捨てる代わりに、金継ぎは欠点と向き合い、意思を持って修復し、より強く、よりしなやかで、以前よりも美しいものに生まれ変わるように教えてくれます。まるで筋肉を鍛えるように、
細胞を壊しながらより筋肉が大きくなり、芯が強くなるのです。これが僕にとっての「壊れているのではなく、継がれている」という哲学の意味です。
このコラムでは、金継ぎの原則が恋愛やその他の人間関係にどのように適用できるかを探ります。
愛とは、完璧な調和で定義されるものではなく、困難の後に一緒に癒すことで得られる強さにあると僕は考えます。壊れた陶器がその歴史を誇りを持って引き受けるように、困難を乗り越えたリ
レーションシップもまた、より豊かな個性を持つようになります。壊れた歴史を消すのではなく、それを受け入れ、そして次世代に「継ぐ」のです。
脆さと強さ
愛は、まるで陶器のように繊細です。僕は陶芸をしているとき、この考えを手で粘土をこねながら感じます。リレーションシップの初期段階では、興奮や情熱があり、その絆は壊れることがないように思えます。しかし、時間が経つにつれて、少しずつ小さなひび割れが生じます。誤解や個人的な不安、外部からのプレッシャーがその原因です。これらのひび割れを放置すると、まるで陶器のひびが広がるように、リレーションシップにも大きな亀裂が生じ、最終的には壊れてしまいます。
しかし、金継ぎの教えでは、ひび割れは終わりを意味するものではありません。それは、より深い意味を持つ絆を強化するための機会なのです。金継ぎの金の継ぎ目は、修復と再構築に費やされた努力の象徴です。それは、オープンなコミュニケーション、許し、または困難な時期にその場にとどまる選択を通じて実現されます。修復の過程は、そのリレーションシップにさらなる美しさをもたらすのです。
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不完全さの美しさ
この世界では、多くの人が完璧なリレーションシップを求めがちです。永遠の幸せや、完璧な相性、まるでおとぎ話のような結末を期待します。しかし、金継ぎの哲学はもっと現実的で、人間らしい視点を気づかせてくれます。愛は決して完璧である必要はなく、不完全な部分にこそ美しさと愛嬌があります。少なくとも僕は「完璧な愛」なんて知りません。
だからこそ、自分の形に合った幸せを築きたいのです。
僕たちはみんなユニークで、誰も代わりのきかない存在です。そのため、愛もまた一つの形にとらわれず、それぞれが自分たちの「愛の形」を作っていくべきだと思います。
リレーションシップには欠点や不完全さがあっていい。それこそがリレーションシップに深みや個性を与えてくれます。すべての争いや涙、疑念も、共に成長し、逆境を乗り越える物語の一部です。ありきたりですが、完璧な人なんていません。僕たちは、いわゆる善と悪の波長の間を行き来しながらバランスを保っているのです。
もちろん、すべてのリレーションシップが修復できるわけではありません。時には、粉々すぎてもしくは亀裂が深すぎたり、修復しようという意志がなくなったりすることもあります。金継ぎの哲学は、無理に物を維持することではなく、修復可能なものを見極め、共にその修復に取り組むことを大切にしています。関係が終わったとしても、それは「失敗」ではなく、恥じることも罪悪感を抱く必要もないのです。
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許しと成長
金継ぎにおける中心的な要素は「許し」です。壊れた絆を修復するためには、互いを許し合うだけでなく、自分自身も許す必要があります。失敗は避けられないものですが、それがリレーションシップを定義する必要はありません。むしろ、それは両者がより深く、共感を持って愛することを学ぶための成長の瞬間となります。
この比喩において、許しは関係をつなぎとめる金のようなものです。許しは壊れた瞬間を回復力と努力の象徴に変え、金継ぎの金の継ぎ目と同じように、過去を消し去るのではなく、それを際立たせます。
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呼び継ぎとリレーションシップ:魂の結合
呼び継ぎは金継ぎに似た技法ですが、異なる破片を使って壊れた陶器を修復する技術です。異なる要素を取り入れることで、元のものよりもさらにユニークで意味のあるものを作り上げるパッチワークのようです。
「呼び」という言葉は「呼びかける」を意味し、2つの魂が静かに互いを引き寄せ合い、ひとつになることを象徴しています。呼び継ぎは、異なる過去や不完全さを持った2人が、新たに一つの存在を作り上げる関係性に当てはめることができます。呼び継ぎは、愛とは完璧であることではなく、異なる部分が融合し、さらに深い美しさを生み出すものだと教えてくれます。それは、2つの魂が互いの欠点を認め合いながら、そこにこそ美しさを見出すことを称える行為なのです。
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最後に
金継ぎの哲学において、リレーションシップは「壊れないこと」が重要なのではありません。むしろ、壊れた部分を修復し、許し合い、その過程で新たな美しさを見つけることこそが大切です。
リレーションシップも陶器のように、時間が経つにつれて避けられないひび割れや亀裂が生じます。しかし、金継ぎの原則を取り入れることで、これらの瞬間を「失敗」として捉えるのではなく、むしろ絆をより深め、美しさを引き出すための機会と考えることができるのです。こうして、リレーションシップそのものを修復するだけでなく、愛の本質を強化することができるのです。
僕のKINTSUGIコレクションでも同じことが言えます。ジュエリーを身につけることで、その人自身がまるで金とダイヤモンドで修復されるかのように感じられます。壊れた経験も、無傷の経験もすべてがその人に美しさと強さをもたらすのです。
だからこそ、僕たちは「壊れているのではなく、継がれている」のです。
稲木ジョージ
ミラモア創設者&金継ぎ哲学者